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現代美術の展望ー新しい平面の作家たち
第17回「VOCA展2010」受賞作家決まる





授賞式風景


1994年に始まった「VOCA展」は今回で17回目を迎えた。多様化する現代美術表現の中で、あえて「VOCA展」は<平面作品>であることに選考の限定としてきた。全国の美術館学芸員、ジャーナリスト、研究者などに40才以下の若手作家の推薦を依頼、その作家が平面作品の新作を出品するという方式で、毎回、国内各地から未知の優れた才能を紹介している。
 今回の「VOCA展2010」には35名の作家が絵画、写真、ドローイング、オブジェなどによる力作を出品。この中から7名の選考委員によりVOCA賞1名、VOCA奨励賞2名、佳作賞2名が選ばれた。また、大原美術館賞が館の選考により決定した。3月14日(日)16:00PMより上野の森美術館にて授賞式が行われ、選考委員長高階秀爾氏から受賞者それぞれに賞状が手渡された。


VOCA賞 三宅砂織氏

奨励賞 坂本夏子氏

奨励賞 中谷ミチコ氏

佳作賞 清川あさみ氏

佳作賞/大原美術館賞
齋藤芽生氏
◇選考所感◇
■高階秀爾(選考委員長/大原美術館館長)
今回の「VOCA展2010」の出品作35点は、それぞれ独自な個性を物語っていて、現代の平面作品の豊かな多様性をよく示すものと言える。VOCA賞を得た三宅砂織の「内緒話」「ベッド」は写真の技法をも用いた特異な手法で少女の微妙な心理状態を白黒の世界に印象深く表現した秀作である。奨励賞の中谷ミチコの謎めいた人物像や坂本夏子のゆらめく空間表現も今回の収穫であり、佳作賞の清川あさみ、齋藤芽生(佳作賞と大原美術館賞)もきわめて力のある新しい大型才能として将来を期待させる。

■酒井忠康(世田谷美術館館長)
絵画(平面)の可能性をひらく試み──という点に関して、今回はたいへん興味深い作品が賞の候補に挙りました。VOCA 賞の三宅砂織「内緒話」「ベッド」は写真と絵画の「間」に潜む実験性とタイトルに示された「物語性」、奨励賞の中谷ミチコ「そこにあるイメージ I」「そこにあるイメージ II」は立体と絵画の”間”を開示して、ちょっとトリッキーな視覚の遊びにしているところが面白い。どちらにしても新鮮な仕事となっている。好感をもちました。

■建畠 晢(国立国際美術館長)
具象絵画全盛の時代は今回のVOCA展にも如実に反映されていた。しかしその傾向はきわめて多様で、一つのイズムが支配する状況でなくなっているともいえる。VOCA賞の三宅砂織の作品はユニークな技法とプライベートな発想のイメージが結びついたチャーミングな世界をなしている。奨励賞の中谷ミチコの絵画的な謎へのスリリングな問いをはらんだイリュージョン、坂本夏子の空間的なゆらぎを演出する不思議な方法にも魅せられた。

■本江邦夫(多摩美術大学教授)
見通しの悪い世相を反映してか、閉塞感のつよい作品に真実味があったように思う。大賞となった三宅砂織はその典型。現像の特性をいかした重層的かつ錯綜した表現で精彩を放った。奨励賞の坂本夏子の打ち震える表面はまったく背後を見せようとしない。同じく中谷ミチコの逆レリーフ的な画面作りも実に内面的である。刺繍を交え複雑な面作りをする清川あさみにしても、第一印象は夜空のヴィジョンであり、齋藤芽生の世界はまさに闇に支配されている。薄久保香、風間サチコ、水谷一等の実力派がいま一歩力を発揮できなかったのも、今回の特徴といえよう。

■荒木夏実(森美術館キュレーター)
「平面」をキーワードにして集められた作品と対峙しながら、改めて「平面」の解釈の多様化を感じた。インスタレーションやビデオなどのメディアを多くの作家が取り入れ、その必然性が強まる今日において、平面もまた「動き」を内部に取り込む傾向が見られる。受賞した三宅、坂本、中谷の三人ともに、平面特有のイリュージョンを効果的に使いつつ、動きの要素を内在させている点が興味深い。

■光田由里(美術評論家)
ひとつの動機が新しい方法を必要とする時、本展の求める新しいイメージが生まれる可能性がある。三宅砂織の浮遊する少女たちの傷と揺れは、前衛写真がかつて編み出した方法が、現代の動機によって転生して生まれた。坂本夏子の画面のゆがみとおののきは、連続幾何学模様が崩壊する寸前に身体と呼応する感覚がある。女性たちが鋭敏に受け取め投げ返す傷とおののきの描写に、今年のVOCA展の成果が象徴されていると思います。

■南嶌 宏(女子美術大学教授)
大賞及び奨励賞の3点は平面芸術の可能性をそれぞれの立ち位置から真摯に問いかけるものであった。大賞の三宅砂織は絵画や版画のように見える写真の振る舞いを通して、平面そのものの潜在的な力を浮上させている。坂本夏子には揺らぐイメージとそれを描く力の重なりを。中谷ミチコにはトリッキーな見せ方ではあるがイメージの視覚的顕現について考えさせられた。


◆展覧会概要◆
・会 期/2010年3月14日(日) 〜 3月30日(火) 17日間
    *会期中無休
・時 間/10:00 〜 17:00 ※入場は閉館30分前まで
・金曜日/10:00 〜 19:00
・入場料/一般・大学生 ¥500 高校生以下 無料
 *ぐるっとパスがご利用いただけます。
・会 場/上野の森美術館
・主 催/「VOCA展」実行委員会
     財団法人日本美術協会 上野の森美術館
・協 賛/第一生命保険相互会社

◆関連イベント◆
●アーティストトーク
・3月20日(土) 午後3時〜4時 齋藤芽生、三宅砂織
・3月27日(土) 午後3時〜4時 坂本夏子、中谷ミチコ
●学芸員によるギャラリートーク
・3月21日(日)、28日(日) 午後3時〜4時

<出品作家名> 朝海陽子/朝地信介/石川直樹/市川孝典/伊藤 彩/薄久保 香/耘野善之/遠藤俊治/大浦和代/大野智史/大庭大介/利部志穂/風間サチコ/清川あさみ/齋藤芽生/阪田清子/坂本夏子/櫻井伸也/佐藤 允/TETTA/竹崎和征/多和田有希/長井朋子/中谷ミチコ/名知聡子/西山裕希子/平下英理/船井美佐/ましもゆき/水谷 一/三宅砂織/柳澤 顕/山本理恵子/和田典子/渡部裕二(敬称略、五十音順)


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